コンサルティングが活用されている場面
企業経営は非常に複雑で、さまざまな要素が絡み合っている大規模な活動です。したがって、経営者には社内外の多岐にわたる情報を整理したうえで、いくつかの戦略案を立案し、それぞれのメリットやデメリットを考慮した意思決定が求められます。そのため、多忙な経営者がより正確な意思決定を迅速に行えるよう支援する場面で、コンサルタントに依頼をすることがあります。このように、経営者の戦略立案と戦略決定を支援するのが戦略コンサルティング、もしくは経営コンサルティングです。
しかし、戦略を決めたとしても実行できないケースも珍しくありません。戦略立案時に想定したオペレーションが実現できなければ、いくら戦略が優れていたとしても想定した結果が得られないからです。業務コンサルティングという分野では、主に戦略の実行を支援し、想定した業務プロセスを実行可能にすることを目指します。
イノベーションコンサルティングは新しい分野です。それは『イノベーションのジレンマ』にて示されたように、本業に備わっている社内プロセスや社内外の価値観、人のスキル等がイノベーションを阻害し、従来の経営戦略が扱うことができないからです。新しい分野でありながらも、成長の鈍化や事業領域・技術領域の発見といったきっかけでイノベーションコンサルティングの活用が増えてきています。
イノベーションに必ずついて回る不確実性
新たな技術開発や新規事業によって事業成長を目指すときは、従来の意思決定やオペレーション方法がそのまま役立ちません。なぜなら、新技術にも新市場そのものが不確実であるうえに、開発プロセスそのものも臨機応変に対応していくことが求められるからです。不確実性に対処するには、限られた情報をもとに尤もらしい仮説を立て、なるべく手戻りの少ない手順で開発をすることが必要となります。一般に「ファクトベース」と呼ばれ、多くの事実をもとに戦略を立てることは情報量の面で非常に困難です。さらに、実行支援を提供するコンサルタントにも不確実なプロセスを伴走するアントレプレナーシップが求められます。
戦略コンサル | 業務コンサル | イノベーションコンサル | |
---|---|---|---|
情報の量 | 非常に多い | 多い | 少ない |
仮説の量 | 少ない | 非常に少ない | 多い |
手順・プロセス | フレームワーク有 | ウォーターフォール | 仮説検証的 |
イノベーションコンサルティングには3つのレイヤーがある
レイヤー | 目標 | 具体例 | |
全社レベル | イノベーションの再現性を高めたい | ・イノベーションが起きやすい組織形態や予算策定プロセス ・オープンイノベーション、アクセラレーションプログラム等の仕組みづくり ・CVCやイノベーションセンターのようなイノベーション専任部門の立ち上げ | |
プロジェクトレベル | 特定のプロジェクトを成功させたい | ・研究成果を商業化したい ・新規事業のタネを成功させたい ・事業開発立ち上げを実行支援、コーチング | |
個人レベル | 従業員をイノベーティブにしたい | ・イノベーションを成功させる人材を増やしたい ・イノベーション人材を掘り起こしたい ・事業開発のスキルを学びたい |
企業が戦略コンサルティングを求める場合、経営幹部もしくは経営企画部門からの依頼でプロジェクトが始まります。業務コンサルティングの場合は、それぞれの業務部門の依頼で始まることもありますし、戦略を補完する形で経営企画部門からの依頼というケースもあります。しかし、企業がイノベーションについて外部専門家の支援を求める際には、複数のレイヤーの依頼があまり意識されることなく、混在していることが多くなっています。最初にどのレイヤーの課題を優先するのかを整理することはとても大事なポイントです。
まずは課題の設定から
3つのレイヤーの課題は、独立したものではなく、互いに関連しています。したがって、まずは状況判断を行ってどこから手を付けるべきなのかを考えてみることが重要です。アイデアコンテストを実施したり、シリコンバレーの視察を行ったり、CVCを立ち上げたりというのは、多くの場合取り組みのきっかけであり、一手段です。手段となる施策について詳しく知ることは無駄にはなりませんが、決してゴールではないはずです。それぞれのレイヤーで重要な点を考慮したコンサルティングアプローチを取ることが求められます。
イノベーション戦略立案と実行
全社レベル
- 再現性の高いフレームワークがあるか?
- 社内シーズと社外シーズの双方を視野に入れられるか?
- イノベーション加速要因の導入と、阻害要因の排除の両面を考慮しているか?
- 仕組みの改善は行われているか?
経営企画部門が主導することが多いです
新規事業コンサルティング
プロジェクトレベル
- 新規事業の経験者はチームに加わっているか?
- 社外のネットワークを構築しながら進めているか?
- 仮説検証を重視し、学びながら事業立ち上げを行っているか?
- 本当の顧客と、顧客価値を見出しているか?
新規事業部門や研究開発部門が主導した活動になっていることが多いです
イノベーション人材開発・研修
個人レベル
- 共通言語はあるか?
- 手法の周知・訓練の機会は与えられているか?
- 業務視点以外の視点(顧客視点や投資視点)を身につける取り組みはあるか?
- イノベーション人材のコンピタンシーは評価されているか?
人事部門が主導した活動になっていることが多いです
最後はチームとして
イノベーションを成功させるのは簡単なものではありません。アイデアが優れているだけでも、仕組みが優れているだけでも、人が優れているだけでも、資源が豊富なだけでも成立しないものです。機会を見つけ、ソリューションを考え、ビジネス仮説を立て、事業開発を一緒に行う経験豊富なメンバーとしてイノベーションコンサルティングを活用することで成長の加速が期待できます。
INDEE Japanのイノベーションコンサルティングでは、経験者による伴走支援と再現性を重視したフレームワークを同時に行っています。